
この記事では、17年にわたり学習塾講師として働いたゆみさん(仮名)が語る、教育現場の過重負担と退職に至った背景について詳しく紹介します
くろねこの証言係・クロノです。
今回は、17年以上にわたり学習塾で講師として勤務し、現在はライターとして新たな道を歩む ゆみさん(仮名・40代)の証言をお届けします。
スキルを活かした転職──公務員から塾講師へ
ゆみさんが塾講師の道を選んだのは、「自分の勉強経験を活かしたい」という思いから。学生時代に塾で学んだ経験があり、自分も同じように誰かを支えたいと感じたことがきっかけでした。
しかし、入社初日から想像と違う場面に直面します。歩行器を使っての出勤を断られたり、職場で怒鳴り声が飛ぶ場面を目撃したり──理想とのギャップは、すぐに現実のものとなりました。
1日の流れ:授業前も“業務時間”
ゆみさんは14時に出社し、17時の授業開始まで予習に充てていました。授業は2コマ、21時まで。
授業後は保護者への報告文の作成やコピー、ファイリングなどの作業が続き、拘束時間は実質8時間以上に及びました。
また、授業のない日でも、チラシの封入や雑務の指示が入り、実質的には“休める日”が少なかったといいます。

突然の人員不足──6人を1人で指導
ゆみさんが退職を決意したのは、ある日の出来事でした。常勤講師とアルバイト2名が同時に休みとなり、6人の生徒を1人で指導してほしいと告げられたのです。
「それは無理です」と断ろうとしたゆみさんに対し、塾側の返答は「無理でも出てきてもらわないと困る」。その言葉に、心が決まったといいます。
非正規と学生バイトの格差
ゆみさんはフリーランス契約で働いていましたが、学生バイトは就職活動などを理由に頻繁に休む一方、自分には「休むな」と圧力がかかったといいます。
給与も月額1万8000円と低水準。年数を重ねても昇給はなく、責任と報酬が釣り合っていないことに疑問を感じていました。
学習塾業界の“ブラック”な構造
ゆみさんが働いていた塾は、多くの大学生バイトに支えられていました。その分、正規・常勤講師やフリーランスに負担が集中しやすく、特に急な休みが出たときのリスクは大きかったといいます。
「予習して、生徒に伝える準備をして…その努力が報われている実感はなかった」。
指導だけでなく、雑務も日常的にあり、「教育者」としての役割だけでは済まされない環境だったのです。
ライターへの転身と気づき
現在、ゆみさんはクラウドワークス経由でライティング業を行っています。自宅で働けることで、通勤のストレスから解放され、自分のペースで業務が進められることに満足しているとのこと。
「塾の仕事は相手に伝える力が求められる。今の仕事でも、そこは活きていると思う」。
経験はすべて無駄ではなかった。そう語る姿には、自信がにじみ出ていました。
これから講師を目指す人へ伝えたいこと
「この仕事は、時給が安く、能力に見合った報酬が得られないことが多い。それでもやるなら、自分の意志を持って臨んでほしい」
塾業界の現実を知っているからこその率直なメッセージです。
最後に、講師を始めた頃の自分へ──「予習も含めてよく頑張ったね」。
この記事の内容は、YouTubeチャンネル「くろねこたちの証言」で配信中です。
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