この記事では、スポーツ店で7年半勤務した沼瀬さん(仮名)が語る、現場のリアルと女性としてのライフステージの変化について紹介します。

入社のきっかけとギャップ
「スポーツが好き」という動機からスポーツ店に正社員として入社した沼瀬さん。就活自体には熱心でなかったといい、内定をもらえたことを“ラッキー”と捉えていたと語ります。
理想像が特になかったからこそ、入社後に感じたギャップは大きかったといいます。たとえば、勤務外にも関わらず全社員が当たり前のように参加する「環境整備活動」。休日に数時間かけて行うこの慣習に、最初は強い違和感を抱いたそうです。現在は制度として改善されていますが、当時の慣習は新人にとって衝撃だったといいます。
業務の実態とシフト制の過酷さ
フロント業務の幅広さ
沼瀬さんの業務は、接客、電話対応、販促、イベント企画、清掃、アルバイト管理、請求書処理など多岐にわたっていました。
特に子ども向けのスクール時間帯は保護者の出入りも激しく、出欠確認や清掃、問い合わせ対応などで館内は混雑。そこに突然の来店者やトラブル対応が重なり、緊張感のある対応が求められました。感情を表に出せない接客の難しさと、瞬時の判断が問われる場面は多かったといいます。
勤務時間と休憩の現実
シフトは6:30出社〜22:45退勤までと幅広く、始発電車で出勤することも。夜の閉店作業から翌朝のオープン準備までの間隔が短い日もあり、体力的にかなり厳しかったと語ります。
社員は業務が立て込むと休憩をとれないこともありました。そんな状況を見たアルバイトから「社員さんは本当に大変そう」と心配されたこともあったと振り返ります。
見えない残業と帰りにくい空気
日々の勤務では、記録に残らない“見えない残業”も問題でした。勤務開始前の朝礼は8:55に設定されており、実質9時出社とはいえ早めの出勤が求められます。退勤後も日報作成や館内清掃など、時間外の業務が日常的に存在しました。
さらに、先輩社員や他のスタッフが残っている中で自分だけ先に退勤するのは気まずく、たとえ「帰っていいよ」と声をかけられても、心の中ではプレッシャーを感じていたと語ります。
内定者研修で感じたカルチャーショック
入社前に行われた内定者研修では、掃除用品を使った訪問販売の実習があり、これが大きなカルチャーショックとなったそうです。他企業の内定者も参加しており、中にはロールプレイで泣き出す人も。厳しい指導の様子に“宗教っぽさ”を感じ、不安を覚えたといいます。
最終的には「度胸がついた」と前向きに捉えつつも、「経費もかかるし、今となっては不要だったと思う」と振り返ります。
“体育会系”な社風とその適性
職場には“体育会的ノリ”が根付いており、業務後に皆で運動をしたり、深夜まで飲み会が続くことも珍しくありませんでした。
ただし、パワハラや無理な上下関係はなく、先輩から「もう帰りなよ」と声をかけられるなど、人間関係には救われた部分も多かったそうです。最初は無理に合わせていた沼瀬さんも、次第に「帰っていいときに帰る」自分のスタイルを確立できたといいます。
心身への影響と退職の決断
フロント業務のリーダーを任されるようになった頃から、心身に負荷がかかるようになりました。特に体調面では、軽いカンジダのような症状が出たことも。男性の上司には相談しにくく、通院もしていなかったため、あくまで自己判断だったそうです。
精神的な悩みについては、上司や同僚に相談できる体制があったと語ります。出産や引っ越しなどライフステージの変化も重なり、産休ではなく退職という決断に至りました。
現在の働き方と過去の経験の活用
現在はリモートで架電業務を行っており、通勤のストレスがゼロになった点は大きなメリットだと感じているそうです。ただし、前職のような責任あるポジションとは異なるため、「やりがいの面で少し物足りなさを感じる」とも。
スポーツ店勤務時代には人をまとめる経験が多かったため、現在は「上司の苦労がわかるようになった」と語ります。経験は違っても、人間関係を築く視点が身についたことは確かなようです。
働き方の理想と、あの頃の自分へ
沼瀬さんが語る理想の働き方は、「職場の人と良好な関係を築きながら、働くときは集中して働き、休むときはしっかりリフレッシュする」スタイルです。
22歳の自分にかけたい言葉は──「いろいろ思うことはあるけれど、会社は良い方向に変わっていく。いい人ばかりの職場だったよ」。
この記事の内容は、YouTubeチャンネル「くろねこ」で配信中です。
他の証言や考察も公開中。
note・ブログ・動画の更新一覧はこちらからどうぞ。
コメント